「どこへ行くんだ?つれていくぞ!」
丸顔のおっちゃんは大きな声で呼び込みます。
バスから降りて来た唯一外国人のわたしたちはあっというまに彼のターゲットになりました。
旦那が「ノンハン湖へ赤い睡蓮を見に来たんだ」と告げると、一瞬彼の顔が曇ったのを私は見逃しませんでした。
ノンハン湖は市内からかなり遠いのです。長距離バスのルート状ですでに通過して来ているのです。
さらに彼の愛車はバイクに荷台がついているタイプ。
バンコクのトゥクトゥクに似ていますが、ベースがバイク。パワーが違うのかな?
長距離には向いていません。
最初から早朝に片田舎で交通手段もわからないところで降りてしまうよりか、市内からタクシーで行こうと決めていました。観光庁のガイドにもお薦めされている移動手段です。
そこへボンボンのついた毛糸の帽子をかぶったおいちゃんが参戦してきました。
がりがりにやせていますがたいへんにぎやか。
どうやら仲間のようです。ふたりは我々を逃すまいと張り付きます。
「ホングナームか?ここだ!ここで行っておけ!」
「稲が生えているところを見に行こう!きれいな写真がとれる!」
やいのやいのと観光地でありがちな英語とタイ語のちゃんぽんでまくしたてます。
「赤い睡蓮の咲く湖へ行きたいんだよ」
と告げると
「いいね!行こう!行こう!きれいな写真がとれるよ!」
「おいちゃん、そこの場所知ってる?サムローで行くの?」
「知ってる!行ける!」
タクシーもみかけたのですが、まだ稼働していないらしく、タクシー付近にひと気がありません。
うーん。湖はざっくりした地図でもはっきり分かる程市内から遠いのだが・・・。
旦那「寒いでしょ・・・サムローは・・・」(吐く息は白い)
おいちゃん「マイ・ナーオ!(寒くないよ!)」
我々「寒いよ!」
おいちゃんは、毛糸の帽子に、上から下までのフィールドコートを着ています。
そら、あんたは寒くないだろうよ。こちとらウインドブレーカー程度の防寒だ。
「まあ、乗っかるか。このおいちゃんに」旦那の覚悟に私も心を決めました。
湖まで行き、我々が船を楽しむ間待っていてくれて、バスターミナルまで戻ってくる。
このルートで1000B。たぶん観光庁のガイドどうりの相場だと思う。
しかし、おいちゃんのサムローが走り出して数秒もたたず、我々ははっきりと後悔するのだった。
めっちゃ寒い。半端ない。
(つづく)
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