おいちゃんのサムローが走り出して数秒もたたず、我々ははっきりと後悔した。
めっちゃ寒い。半端ない。
あと幹線道路を高速で移動する囲いの無い乗り物なんて初めてだったから、ビックリ!
あわてて持って来たストールを旦那の首元に仕込み、ジッパーも口元までしっかりあげる。
もちろん、フードもすっぽりかぶり頭を保護。
この時点で並走する車の運転手にはかなり面白い光景になっていたに違いない。
自分で想像しても面白いもん。
あー。どこまで耐えられるかなー。
風にあおられ、ウインドブレーカーがバタバタはためく。
「星がめっちゃきれいだね!」(それくらい真っ暗)
とか、前向き発言でお互いをはげましていると、おいちゃんガソリンスタンドへ入る。
そうか、補給するほど遠いのか・・・。ここでちょっと心が折れる。
おいちゃん「ガソリン入れたいんだ。先に200Bくれ!最後に800Bでいいから!」
旦那「!?なんだなんだ?金が欲しいのか?」
我々との話がついていないのをみてスタンドのお兄ちゃんあきれている。
朝一番の客だろうから仕方ないけれど、手持ちも無いのかー。
悟った旦那が200Bを渡す。
給油を終えたサムローは真っ暗な道路を、車にバンバン抜かされながらひたすら走る。
どれくらい走ったのかな・・・
脳裏に地図を描いていたとき、おいちゃん道路脇のガイヤーン屋台でまた止まった。
「なんだなんだ?おいちゃんの朝ごはんか?」
と、思っていたら、湖へ行く曲がり道がどこかわからなくなったらしい。
屋台のおばちゃんに尋ねている。時々「ブアデーン・ブアデーン」と聞こえる
私「マジかー。おいちゃん自信満々だったじゃん」
おいちゃん「がははがはは。バックバック!」
もときた道をかなり引き返した。
わたし、かなり凹む。
屋台のおばちゃんが教えてくれた道を曲がると、そこは誰も通らない、家も無い霧がかかった道。
舗装はされているけれど、立木がうっそうとしていて、先も脇も見えない。
本当にこの道でたどり着けるのか、疑問が浮かんでしまった。
私「おいちゃんひとりでも、うちらくらい殺せる?」
旦那「まだ200Bしか受け取ってないから・・・こんなに遠くに来てまで・・・おいちゃんの損じゃない?」
私たちはあまりの寒さに心のスイッチを切り、耐え忍ぶ技を実行していた。
(つづく)
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